放射線測定器のたろうまる
投稿: 2013/10/16
たろうまる@なかやま

空間線量計と個人線量計の違いは?

線量計の目的

線量計を使う場合、一番の目的は、今の自分の被ばく量を知ることです。ただ測るだけではなくて、年間の被ばく線量より低いかどうか、比較することも大事なポイントですね。

年間被ばく量の上限値などは、ICRP( 国際放射線防護委員会 )日本政府などが目安の数字を公開しています。たとえば、長期的な目標として、年間での積算線量、1 mSv 以下が望ましい といった値です。線量計の利用者は、この上限値と自分の測定値を比べることになるわけです。

防護量と実用量

ICRP などの機関が定める放射線の量は、「防護量」と呼ばれています。

「防護量」は、これ以下に被ばくを抑えることが望ましいとされる値ですが、防護量の測定は、実は簡単ではありません。実は、人体の各臓器の最大被ばく線量を合計した値が、防護量として決められています。実際に測定しようとすれば、各臓器ごとに線量計でもつけておく必要がありますが、そんなことはできるわけもありませんので、「防護量」は実際には測定できないような量になっています。

そこで胸ポケットに付けた線量計で、簡易的に測ってしまおうというのが、線量計の考えになっています。線量計で測定した放射線量と、「防護量」がそれほど差がなければ、OKにしよう、という考えで線量計は、成り立っています。

線量計などで測定した値は、「実用量」と呼ばれています。実用的な値、実際に測れる値というわけです。

空間線量計と個人線量計の違いは?

はじめて放射線測定器を選ぶときには、「空間線量計」と「個人線量計」という言葉が出てきて、戸惑うかもしれません。これら2タイプの測定器は、通常お使いの環境では、ほとんど同じ数字を示します。厳密に言えば、1-2%ほど「個人線量計」の方が高い値を示しますが、わずかな差ですので、ほとんど同じといってもよいでしょう。

2つの線量計の違いをまとめてみました。

種類 空間線量計 個人線量計
解説 空間線量計は、その測定器が置いてある場所の線量です。公園、室内、広場、道路といった場所の線量ですが、その場所に人間が滞在していた場合に、どれだけ全身に被ばくを受けるのかという数字が画面に表示されます。 人間が「身につけた」状態で使う線量計です。身につけた人の被ばく量を測定します。胸ポケットに付けて利用し、主に正面から人体に当たる放射線を測定します。放射線は、物に当たると跳ね返る性質があるため、人体の内部に当たって跳ね返った分も考慮された校正がされています。
使い方 手に持って、測定したい方向に向けて使う。 胸ポケットなどに付属のクリップで留めて使います。

購入する際に、どちらを選ぶか、迷うかもしれませんが、どう使いたいかで選ばれるとよいと思います。2つの線量計の測定値としては、差は、わずか1-2%程度といわれており、さほど大きくありません。

選択に迷った時には、「どうやって使いたいか?」に応じて、測定器を選ばれるとよいかと思います。

手に持って使いたい、行くところ行くところで、汚染の度合いを探して歩きたいなら空間線量計。あまり探し回ることはしなくて、ずっと身につけておいて自分の被ばく線量を知りたいなら、個人線量計というわけです。間違った使い方をして線量計を手に持ったとしても、測定値の差は、大きくありませんので、どちらを選んでもよいと思います。

被ばく上限値との比較

「個人線量計」と「空間線量計」の2タイプの線量計について見てきましたが、どちらも測定値の差は大きくなく、実際に測定できる量「実用量」を測定する物です。小さな測定器で一カ所を測って、全身の被ばく量として測定値を読み取っています。

気になるのは、この2つにどれぐらい差があるのか?ということですね。

防護量国際規格で定めるように、人間の臓器一つ一つの被ばく上限値を合計したような値
実用量小さな線量計を身につける。あるいは、空間線量を測定した値

この2つは、正確に調べてみると、実用量>防護量の関係になっていることが知られています。具体的には、「防護量」よりも、線量計で測定した「実用量」は20%ほど高い値になります。

個人線量計や空間線量計で測定した値は、それ自体は正確に校正された正しい値ですが、臓器を一つ一つ測った被ばく限度量(防護量)と比べるとよりも高めの数字が出ているというわけです。 体の臓器一つ一つの被ばく線量を測ることは無理なので、線量計という小さい機器を使うわけですが、線量計の数字はより高めの値になるということで、安全サイドに立った値になっているといえます。

こちらの赤線が、空間線量計での測定値です。それより下にあるのが、様々な体格に対しての防護量です。空間線量計で測定した値は、常に高い線量になっており、過小に見積もることがないようになっています。

セシウム137( 137Cs 0.662 MeV ) のところを見ると、20%ぐらい空間線量の方が高くなっています。

周辺線量当量と防護量の関係

Polimaster の空間線量計と個人線量計

Polimaster の測定器では、こちらのような分類になっています。

空間線量計
個人線量計

空間線量計と個人線量計にも、測定値には、大きな差がありませんので、「どうやって使いたいか?」に応じて、測定器を選ばれるとよいかと思います。 手に持って使いたいなら、行くところ行くところで、汚染の度合いを差がして歩きたいなら空間線量計。ずっと身にみつけておいて、自分の被ばく線量を知りたいなら、個人線量計というわけです。