加速器、医療機器などの短時間・パルスX線を測定

パルス放射線

医療や素粒子実験で使われる加速器の放射線は、線量0と高線量の状態が、数ミリ~数ナノ秒で周期的に繰り返されます。

これらの連続した超短時間・放射線は、パルス放射線と呼ばれています。パルス放射線を通常の原子力災害用の放射線測定器で測定すると、測定値がまったく安定せず正しく測定できません。

X線・放射線測定器 AT1123 は、高感度・高速デジタル処理を行うことで、 最短10ナノ秒の 連続周期パルス放射線から正しい線量率を測定することができます。

パルス放射線に対する正しい線量率が測定できることで事故や機器の操作ミスなどによる高線量の被ばくが発生した場合に、即座に警告アラームを発動することができます。

短時間・放射線

医療機関で利用されるレントゲン撮影は、カメラのフラッシュ撮影に似ており放射線が短時間に連続して照射されるのが特徴です。照射される時間は照射される体の部位によって異なり、1秒以下~10秒間です。

フラッシュのような短時間照射の放射線を正確に測定するには、短時間での放射線測定の能力と、照射時間を自動検出するタイマーのような仕組みが必要になります。 通常の原子力災害用の個人線量計などでは、単発・短時間の放射線を正しく測定できません。

線量計 AT1123 は医療機器向けに開発されており、0.03秒のX線照射で正しい線量率と照射時間を算出し、設定値以上の被ばくがある場合に警告を発動することができます。

遠隔・警告ユニット

遠隔ユニット(オプション)は、測定値を離れた場所で測定値を表示する別の端末です。作業者の被ばくを回避することができます。ケーブルは最大 50m まで延長できます。

警告ユニット(オプション)は、放射線の存在を作業者に分かりやすく表示する警告ライトです。警告ライトは緑・赤の2段階となっており、 X線の通常の照射や異常時の警告時などに合わせて音や光で作業者に状態を伝えることができます。警告音は8段階で調節することができます。

これらのオプションなしの場合には測定器本体だけでも、設定された放射線量を超える場合には警告音を鳴らすことができます。

漏えいX線を検出

X線・放射線測定器 AT1123 は、上部・左右・下部に広い指向性を持っており測定器の向きに依存せず、ほぼすべての方向からのX線を検出できます。

医療従事者のいる防護エリアに入ってくる放射線は、機器の操作ミス、事故などによるX線の直接照射に加えて、金属などで散乱した放射線、防護ドアの締め忘れなど様々な状況が想定されます。

広い指向性を持っている AT1123 は、あらゆる方向の放射線に対してX線・ガンマ線の漏洩警告を即座に発動できます。

指向性特性

2種の線量計

AT1121 と AT1123

X線・線量計には2タイプあります。両者の性能はほぼ同じですが、AT1123 には加速器から出る放射線(短時間のパルス放射線)の測定機能があります。

  • 胸部レントゲンのような短時間X線を測定する場合には、AT1121 , AT1123 が対応機種です。
  • 粒子加速器を使った機器から発せられる周期的・超短時間パルスX線まで測定できる機種は、AT1123 です。

X線線量計の違い
性能 動作条件 AT1121 AT1123
写真 どちらも形状は同じです。 Atomtex AT1121 Atomtex AT1123
連続X線
  • 最短 8秒の継続照射
  • 連続したX線・ガンマ線
測定可能測定可能
測定可能測定可能
短時間X線
  • 最短の照射時間 0.03[秒]
  • 単発照射
  • 連続したX線・ガンマ線
  • サンプリング周期 0.01[秒]
  • 最低線量率 3[μSv/h]
  • これより短時間の場合には、平均測定に切り替えると測定可能です。
測定可能測定可能
測定可能測定可能
超短時間パルスX線
  • 最短の照射時間 10-8~3×10-2[秒]
  • 最短 8秒の継続照射
  • 周期 10~104cps
  • 最大 1.3Sv/s
  • 最低線量率 3[μSv/h]
測定不可測定不可
測定可能測定可能

0.03秒以下のレントゲン照射の場合

0.03秒より照射時間が短いでも測定ができます。

この場合にはX線の照射時間をあらかじめ調べて、決められた計算式を使うことで測定値や警告発動値を手計算で計算できます。 計算結果にもとづいて、警告の発動値は低めに設定することで正しい線量で警告を発することができます。

0.03秒より照射時間が長い場合には測定値、警告ともに自動計算されます。

方向特性

方向特性は、測定器の設置の向きに対して測定器の感度を示しています。

AT1123 は指向性(方向特性)が広いため、どの方向から放射線がきても効率よく検出できます。

方向特性・水平面
方向特性・垂直面

医療用の放射線の漏洩をチェックに最適

防護板の向こう側で医療従事者の被ばくを監視する、、という目的の場合、 医療機器の事故や使い方の間違いによる直接の放射線照射や、 金属などに放射線が当たって散乱した放射線など様々な状況が考えれます。

AT1123 は指向性(方向特性)が広いため、どの方向から放射線が入ってきても即座に警告を出すことができます。

動作モード

4つの動作モードを目的に合わせて切り替えて使用します。

動作によって表示されるアイコンが異なります。


連続・放射線測定

放射線源など常に放射線が出ているものを測定するモードです。

連続放射線測定

  • 最短 8秒の継続照射
  • 連続したX線・ガンマ線

短時間・単パルス放射線測定

最小時間 0.03秒の単照射・短時間の連続放射線を測定できるモードです。

短時間・単パルス放射線測定

  • 最短 0.03[秒]
  • 単発照射
  • 連続したX線・ガンマ線
  • サンプリング周期 0.01[秒]
  • 最低線量率 3[μSv/h]

連続・周期的パルス放射線

最小時間10ナノ秒の周期的・連続パルスの測定モードです。

連続・周期的パルス放射線

  • 最短 8秒の継続照射
  • 周期 10~104cps
  • 最大 1.3Sv/s
  • 照射時間 10-8~3×10-2[秒]
  • 最低線量率 3[μSv/h]

探索モード

放射線が出ている場所、放射線源を探すモードです。

放射線源を探すモード

0.03秒より照射時間が短い場合でも測定可能です。この場合には機器の照射時間を調べて、決められた計算式を使うことで測定値の計算や警告発動値を決定できます。

線量計のエネルギー特性

線量計は測定対象の放射線エネルギーに応じて先端の保護キャップを変更することで対応できるエネルギー範囲を切り替えています。


線量計のエネルギー特性

対応する放射線測定

  • X線
  • ガンマ線
  • 制動X線
  • 連続照射
  • 短時間照射 ( 0.03 秒以上の単パルス )
  • 平均線量( 10ナノ秒の連続パルス )
  • ベータ線のカウント測定

X線線量計の利用用途

  • 医療用X線の漏洩検知
  • 放射性医薬品の測定
  • 粒子加速器施設
  • 原子力事故
  • 核兵器、原子力産業・工場
  • 放射線管理区域

接続の組み合わせ

3つの機器を必要に合わせて組み合わせできます。

以下のような場合には遠隔ユニットの利用をおすすめいたします。

  • 放射線が照射されている時の放射線量を確認する必要がある場合
  • 放射線の漏洩事故などが発生した場合に、近づくことが難しい場合

製品 測定値の表示 音アラーム 機能
測定器本体 機能あり 機能あり 検出器本体、検出部分です。本体だけでも設定された放射線量の値以上を検出すると、警告音を発動させることができます。
遠隔ユニット 機能あり 機能あり 検出器部分で測定した測定値を離れた場所で確認することができます。測定器の設定も変更できます。
警告音ユニット なし 機能あり 緑、赤の2段階のライトで放射線の強さを表示し、警告段階では警告音を鳴らして作業員に放射線の異常を警告することができます。
線量計のみ
線量計+遠隔ユニット
線量計+警告ユニット
線量計+警告ユニット+遠隔ユニット

設置方法

壁固定用ブラケットと、三脚オプションも用意されています。

設置方法
こちらの章は、測定器とパソコンとシリアル接続するプログラマーや開発者向けの解説です。通常の利用者は読み飛ばしてください。

シリアル通信の対応機種

この測定器は開発者向けのシリアル通信の対応機器です。

シリアルはプログラム開発の中で、最も簡単な手順で実行できる通信方式です。

プログラム言語は、ほぼすべてのプログラム言語が使えます。

通信の手順

  1. Write 命令を使って放射線測定器に命令文を書き込み(送信)します。
  2. 放射線測定器が、即座に測定値を返してくる
  3. read で読み出す

こちらの3ステップを繰り返すことで、定期的に測定値を取得することができます。

1

命令を送信

お使いのWindows パソコンや Android, iPhone のスマートフォンからシリアル通信上に命令文を送信します。 命令文は8ビットのバイト列です。プログラムから Write して測定器へ測定命令を送信します。

送信例
0x12
0x34
0x56
0xAB
2

測定値を受け取る

続いてプログラムでシリアル通信を Read すると測定器から届いた測定値情報が入ったバイト列を受信できます。このバイト列には、線量率、CPSなどの浮動小数点情報が含まれています。

受信例
0xCD
0xEF
0x01
0x0F
3

アプリに表示

線量率などの測定値を値に変換し、パソコンやスマートフォンの画面に表示します。この動作を繰り返すことで、測定値情報を使ったアプリケーションを簡単に開発することができます。

放射線の測定値

たろうまるの安心サポート体制

高性能な放射線測定器を、ずっと安心してお使いいただくために、最高のサービスを提供したいと考えています。
いつでもご遠慮なくお問い合わせください。

校正と点検

たろうまるは、正規販売店です。

測定器の販売、点検・校正、技術サポートまで、メーカーの技術者から教育を受けたスタッフが対応しております。 購入頂いた線量計、放射線測定器、サーベイメーター、食品用放射線測定器は たろうまるを経由して、メーカーでの修理、点検、校正を行うことができます。

安心の修理体制

メーカー保証期間、保証後も、修理は承っております。

修理品の送料につきまして、
弊社側からの発送の場合は弊社負担、お客様側からの発送については、お客様のご負担となります。あらかじめご了承ください。

サポート

すべての製品は、10年間以上利用されることを想定した耐久性のある設計です。 お求めいただく測定器は、長い期間お使いいただく製品になります。

たろうまるでは、お客様が製品を使用している間ずっとサポートを行っていく体制をとっております。 使い方、修理、校正、点検など、あらゆる場面において技術スタッフが、いつでも対応しております。

パルスX線・線量計 AT1123 仕様

  • 製品の分類

    線量計
  • サイズ

    233 x 85 x 67mm ATOMTEX AT1123 - X線・線量計
  • 重さ

    900 g
  • 検出器

    プラスチックシンチレーション φ30 x 15 mm
  • エネルギー範囲

    • 15keV~10MeV
      (連続/短時間放射線)
    • 15keV~10MeV
      (単パルス/連続パルス)
  • 線量率の測定

    • 0.05μSv/h~10Sv/h
      (連続放射線)
    • 5μSv/h~10Sv/h
      (短時間放射線・単パルス)
    • 0.1μSv/h~10Sv/h
      (連続パルス)
  • 線量率の固有相対誤差

    • ±15
      (連続/短時間放射線/単パルス)
    • ±30
      (連続パルス)
  • 積算線量の測定

    0.01μSv~10Sv
  • 感度 (137Cs)

    70 cps/µSv/h
  • 応答時間

    2秒以内
  • エネルギー依存性

    • ±35
      (15~60keV) [*1]
    • ±25
      (60keV~3MeV) [*1]
    • ±25
      (3MeV~10MeV) [*2]
    • ~-50
      (10~20MeV)< [*2]
    [*1] : 保護キャップ[A] 0.025~3MeV 使用, [*2] : 0.06~10MeV 保護キャップ [B] 使用
  • 2タイプの保護キャップ

    利用するエネルギーに応じて保護キャップを交換することで対応エネルギーを切り替えできます。 放射線・エネルギー切り替え
  • 連続・周期パルス照射の最小時間(最短8秒の継続が必要)

    10ナノ秒
  • 短時間・単パルス照射の最小時間

    0.03
    (これより短い照射時間の場合、照射時間が分かれば計算式を使うことで警告発動値を設定することができます)
  • 起動時間

    1分以内
  • 電源

    • 充電池(内蔵)
    • ACアダプターによる外部電源
  • 連続稼働時間

    12時間以上
  • 動作温度

    -30~+50
  • 湿度

    95以下
  • 校正・試験所規格

    ISO 17025
  • ダウンロード

  • 国際規格への対応

    • IEC 61000-4-3-2009
    • IEC 61000-4-5-2014
    • IEC 61000-4-6-2011
    • IEC 61000-4-11-2006
    • IEC 61010-1-2014
  • 校正・試験所規格

    ISO 17025