サリン、VX、マスタードなどを検出
10秒で検出
検出紙 CALID-3 は、液状のG剤(サリンなど)、V剤(VXなど)、H剤(マスタードなど)を検出します。
使い方は簡単です。液体や飛沫を検出紙で拭いとるだけです。化学剤の種類に応じて、10秒以内に3色の色変化が現れます。
検出紙は安価で使いやすく、短時間でたくさんの場所を検査することができます。素早い初期対応のために有効な手段です。
反応の仕組み
CALID-3には、3色の染料が染みこまさせてあります。
液状のG剤、V剤、H剤が紙に付着したとき、それに対応した染料が溶けて色が変化し、化学剤があることを示します。
黄:G剤(サリン、タブンなど) |
濃い緑:V剤(VXなど) |
赤:H剤(マスタードなど) |
軍や消防、警察も使用
化学剤検出紙はアメリカ軍やNATOの標準装備品となっており、世界中の消防、警察、軍隊で利用されています。
また、2012年からカリフォルニア州のFIRESCOPE標準装備リストに、危険物対応のファーストレスポンダーに必須のアイテムとして、M8検出紙が記載されています。
管理が簡単
CALID-3は、気温30℃の環境下で製造から5年間保存することができます。
また、他の検出器とは違い、使用していない間の定期メンテナンスや、使用後の部品交換などの必要がありません。
手軽に維持ができて、いざという時にはすぐ使用できるのが検出紙の利点です。
CALID-3の特徴
- 色の変化で化学剤の存在を視覚的に確認
- 最短30秒以内に判別可能
- 製造から5年の保管期間
- シールの粘着力は48時間以上持続
- メンテナンス不要
- 各国に多数の導入事例あり

使用方法
貼り付けて検出
隊員の服や靴、車両・施設の周囲に貼り付けて使用する方法です。
化学剤による攻撃・汚染を知らないうちに受けていないか確認できます。

液体に接触させて検出
疑わしい液体に検出紙を直接触れさせて使用する方法です。
※検出紙を液体に強くこすらないでください。


化学剤を検出=色が変化
CALID-3は、紙の原料に赤・黄色・濃い緑の染料粒子を染みこませています。
液状のG剤、H剤、V剤が紙に付着したとき、それぞれの物質に対応する染料が溶けることで、化学剤があることを示します。
G剤:タブン・サリン・ソマン・エチルサリン・シクロサリン |
H剤:サルファマスタード(別名:マスタードガス) |
V剤:VXガス・VMガス・VPガス・VSガス・VGガスなど |
神経剤とマスタードガス
Gシリーズ剤、Vシリーズ剤などが分類される「神経剤」は、神経に信号を送るための化学物質「アセチルコリン」の分解を阻害します。アセチルコリンが蓄積して全身の神経や筋肉などを過剰に刺激するため、体に不調が生じます。
液体の神経剤はゆっくりと作用します。数十分~数十時間後に突然倒れたりなどの、全身に及ぶ深刻な作用が現れることが知られています。
マスタードガス(H剤)は、残留性が高く、ゴムも浸透し、体に影響が現れるのが遅いことから、非常に危険な化学兵器です。タンパク質やDNAに対して強く作用するため、がんを発症する恐れもあります。
いずれの物質も常温では液体です。
わずかな吸収、吸引でも深刻な被害がもたらされることから、素早い検出と対応が必要となります。

使用の手順

①CALID-3から、検出紙を1枚切り離します。

②防護服や装備品など、汚染が疑われる箇所に検出紙を接触させ、液体を吸い取ります。

または、裏のシールを剥がし、化学剤が付着する可能性のある場所に検出紙を貼り付けます。

③検出紙に色がついたら、化学剤が存在している可能性があります。
冊子のサンプル色と見比べてください。
※必ずしも見本と同じ色になるとは限りません。
Youtubeの紹介動画
CALID-3が、OPCWのYoutubeチャンネルで紹介されました。当機関で紹介されるということは、CALID-3が世界的にメジャーな検出紙であると言えます。この動画では、CALID-3の基本的な使い方を学ぶことができます。
OPCWとは
OPCW(化学兵器禁止機関)は、1997年に発効した「化学兵器禁止条約」に基づき設立された国際機関です。
本部をオランダのハーグ市に置き、世界的な化学兵器の全面禁止や不拡散のために、化学兵器貯蔵施設や廃棄施設への現地査察、化学兵器に対する防護、検証に関するセミナーや研修などを行い、化学兵器禁止条約を締結した国どうしの協力を積極的に推進しています。
化学剤の検出器と誤検出
化学兵器はサリンやVXなどの神経剤、シアン化物剤などの血液剤、ただれを起こすびらん剤、 呼吸器障害を起こす窒息剤の種類があります。工業有害物質は、硫化水素(H2S)、 一酸化炭素(CO)、ホルムアルデヒド(CH2O)などの身近にもある有毒な物質です。
検出器は、これらの化学兵器や業有害物質があるかどうかその可能性を検査できます。 化学剤の検出では常に誤検出の可能性があるため複数の検出器を組み合わせて使う必要があります。
例としてサリンが検出されたとします。サリンは神経の伝達物質を阻害するタイプの化学兵器ですが身近なところでは 農薬なども同じ性質を持っており神経伝達物質を阻害します。 そのため農薬をサリンと誤検出することは1次スクリーニングの段階では頻繁に起こりえます。 1次の「検知」の段階で可能性のある物質が見つかったら、次は「識別」ができるより精度の高い測定器で 2次スクリーニング検査する必要があります。
さらに2次スクリーニングでもサリンと検出されたら、続いて試料を検査機関で検査する必要があります。 化学物質を識別するには、このような段階を得ることで農薬なのか、サリンなのかを判別することができます。

化学剤検出紙 CALID-3
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検出対象
神経剤 (G,V) / びらん剤 (H) - 液剤 -
感度
0.5μL ~ -
検出速度
10秒未満 -
使用可能な温度
-40 ℃ ~ 60 ℃ -
耐性
湿気・雨水・燃料など -
保管可能期限
5年 -
冊子/検出紙の大きさ
65 x 100 mm / 65 x 85 mm -
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