核種識別ソフトウェア PoliIdentify 取扱説明書
GPSログ出力で地図作成と核種識別・スペクトル解析
放射線スペクトル
独立行政法人・放射線医学総合研究所が作成した動画より、放射線スペクトルの形についての解説します。
測定器を使う上では、これらの知識は必要ありませんが、仕組みを理解するという上で、軽く読んでみてください。
ガンマ線と放射線測定器の相互作用
放射線がシンチレーション検出器に入ってきたときに発生するガンマ線の相互作用としては、3タイプあります。
相互作用の名前 | 解説 |
---|---|
光電効果 | ガンマ線のエネルギーがすべて電子に与えられます。ガンマ線は消えます。 |
コンプトン散乱 | ガンマ線のエネルギーの一部を電子に与えて電子をはじき飛ばし、ガンマ線は別の方向に再び弱まって、別の方向に飛んでいきます。 |
電子対生成 | ガンマ線のエネルギーのすべてを使って、電子と陽電子の対を生み出す。 |
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放射線スペクトル
これらの3タイプの相互作用の結果として、こちらのようなスペクトルが生成されます。
全エネルギーピーク(光電ピーク)
放射線測定器に入射したガンマ線が、検出器に当たってすべてのエネルギーを電子に与えて止まる場合、全エネルギーピークと呼ばれるピークになります。
光電ピークとも呼ばれており、スペクトル解析で一番利用されるピークです。
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コンプトン連続部のスペクトル
ガンマ線がコンプトン散乱して電子をはじき飛ばし、その後、検出器から出て行ってしまう場合もあります。この場合、コンプトン連続部という連続的なスペクトルが観測されます。はじき飛ばし方の角度によって、電子に与えるエネルギーは、様々ななので、連続的な放射線スペクトルになります。
コンプトンエッジ
散乱角が180度の場合に、電子に最もエネルギーを与えることになります。ガンマ線は、そのまま180度折り返して、検出器から出て行ってしまいます。この時、観測されるのが、コンプトン連続部のもっと高い領域です。これを、コンプトンエッジと呼びます。
後方散乱ピーク
また壁や人体など、検出器の周りの物質に当たってから、放射線検出器に入射する放射線もあります。
この場合にも、コンプトン連続部のエネルギーが観測され、中でも物質に180度で当たって、弱まったガンマ線が放射線測定器に入射して、電子にエネルギーをすべて与えて止まる場合、後方散乱ピークというスペクトルを発生させます。
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放射線のスペクトル
このような理由から、こちらのような形のスペクトルが得られます。
さらに高エネルギーな放射線の場合
高いエネルギーを持つ放射線の場合には、このようなスペクトルになることがあります。
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電子対生成
入射したガンマ線のエネルギーが高い場合、マイナスの電子とプラスの陽電子の対を生成することがあります。電子はそのまま検出器で止まり、陽電子は、さらに2つのガンマ線に別れます。
そのすべてが検出器内で止まった場合には、全エネルギーピークがもっとも高い位置で観測されます。
シングルエスケープピーク
陽電子から別れた2本のガンマ線、そのうちの1本が放射線検出器の外に逃げてしまった場合、0.51 MeV 低い位置にシングルエスケープピークが観測されます。
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ダブルエスケープピーク
さらに2本とも放射線検出器外に逃げてしまうと、さらに 0.51 MeV 低い位置にダブルエスケープピークが観測されます。
放射線スペクトル
これらの結果が合わさり、高エネルギーな放射線のスペクトルは、こちらの形になります。
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2本のスペクトルをもつ放射線の場合
2本の異なるエネルギーを持つ放射線が入射した場合には、それぞれの放射線と合計の放射線の3本が観測されます。
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