サリン、VX、マスタード化学剤の検知

化学剤を簡単に検知

CALID-3 は、液状のG剤(サリン)、V剤(VX)、H剤(マスタード)に対応し、 色の変化によって、30秒以内に化学剤の存在を確認できます。

使い方はシンプルで、車体や防護服、床、タイヤなどに付着した液体を拭き取るだけです。

専門知識がなくてもすぐに使用でき、テロなどの現場において広い範囲を短時間で調査するのに適しています。

見てわかる3色

反応の仕組みは、検知紙に染み込ませた3種類の染料が、それぞれの化学剤に反応して色を変えるというものです。


G剤/サリン、タブンなど
V剤/VXなど
H剤/マスタードなど

OPCWとNATO標準

CALID-3 は OPCW(化学兵器禁止機関)で利用されており、NATO の標準装備品としても採用されています。

世界中の消防・警察・軍隊、そしてシェルター内での備蓄としても使用しており、実戦的な信頼性が確保されています。

特にテロや化学事故の現場において、他の検知器と併用することで高い検知精度を確保できます。

5年間保存

未使用時は気温30℃の環境下でも5年間保存が可能で、定期的なメンテナンスや部品交換は不要です。

電源を必要とせず、開封してすぐに使用できるため、 初動対応や二次汚染の確認にも有効です。

裏面の粘着シールで、防護服や車両の窓などに貼り付けて使用できるため、現場に持ち出す際にも便利です。

必要な時にすぐ使え、持ち運び・配備も簡単です。

CALID-3の特徴

  • 化学剤( CWA, Chemical Warfare Agent ) の検知
  • 色の変化で化学剤の存在を視覚的に確認
  • 最短30秒以内に判別可能
  • 製造から5年の保管期間
  • シールの粘着力は48時間以上持続
  • メンテナンス不要
  • 各国に多数の導入事例あり
検知紙の表紙

使い方

貼り付けて使う

防護服、車両のガラスなど飛沫がかかりそうなところに裏面シールで貼り付けて使います。あるいは車両のタイヤや、壁、床などを拭き取り検査します。

化学剤による暴露や汚染状況をすぐに確認できます。

液体に接触させて検知

液体、飛沫に検知紙を直接触れさせて使用する方法です。

暴露後、30秒ほどで待ちます。色変化が現れた場合には検知器冊子の裏面のサンプル色と見比べて化学剤を判定できます。

検知紙は偽陽性、つまり誤って色変化する場合もあります。そのため他の化学剤検知器(IMS - イオンモビリティースペクトロメトリー等)と併用して使うことを推奨しています。検知紙は偽陽性がありますが、テロの現場など化学剤の使用が明らかである場合には低価格で広い範囲の汚染調査を行えます。

検知紙を貼り付けて使用
検検知紙の色変化

化学剤を検知=色が変化

CALID-3は、紙の原料に赤・黄色・緑の染料粒子を染みこませています。

液状のG剤、H剤、V剤が紙に付着すると、各物質に対応する染料が溶けて色変化が見えるようになります。

特にV剤は常温・常圧ではすべて液体です。名前に「ガス(Gas)」とついていますが、気体ではなく揮発性の低い油状液体です。


G剤 タブン・サリン・ソマン・エチルサリン・シクロサリン
H剤 サルファマスタード(別名:マスタードガス)
V剤 VXガス・VMガス・VPガス・VSガス・VGガスなど

神経剤

G剤 (サリン) やV剤 (VXなど) は「神経剤」に分類されます。

神経剤は、神経伝達物質「アセチルコリン」を分解する酵素 (アセチルコリンエステラーゼ) の働きを阻害し、 アセチルコリンが神経と筋肉の接合部 (シナプス間) に過剰に蓄積します。 その結果、神経や筋肉が持続的に刺激され続け、けいれん、呼吸困難、最終的には死に至ることがあります。

マスタードガス

マスタードガス (H剤) は、残留性が高く、ゴムや皮膚を浸透するため、防護が難しい非常に危険な化学兵器です。 また、症状が現れるまでに時間がかかることも特徴です。

マスタード剤は、タンパク質やDNAを損傷する作用があり、発がん性があるとされています。

いずれの物質も常温では液体のため、検知紙で拭き取ることで検知可能です。

検知紙の色変化

使用の手順

CALID-3から、検知紙を1枚切り離します。


検知紙を切り離す

防護服や装備品など、汚染が疑われる箇所に検知紙を接触させ、液体を吸い取ります。

検知紙を貼り付ける

検知紙に色がついたら、化学剤が存在している可能性があります。

検知紙の色を比較

CALID3の色変化

こちらは実剤を用いた検証結果です(メーカー Oritest社ラボにて実施)。

CALID3 の色は、反応後20分を過ぎると徐々に褪色・変化が始まります。証拠保全のため、判定後すぐに写真撮影を推奨します。それでも、1時間程度は色が視認できるレベルで残ります。

化学剤検知紙における褪色(または色の変化)は一般的な現象であり、米軍の液体中神経剤検知キット M272 を含む他の検知紙でも同様の傾向があります。

そのため、色の判定は取扱説明書に記載された「所定の判定時間内」で行うことが非常に重要です。


化学剤検知紙の色変化

実剤(化学兵器用の薬剤)による試験・検証実績

本ページで紹介するOritest社の製品は、国家機関が管理するCBRN専門施設において、実際の神経剤等を用いた公式試験を受け、 確実に検知できることが検証されています。 これらの試験は、各国の法令および国際的な管理体制の下で、 限定された環境において実施されています。


DETEHIT

液体・気体用 神経剤検知紙

PDFVVÚ 試験結果

試験場所: Vojenský výzkumný ústav(VVÚ) 、Military Research Institute(チェコ共和国)、チェコ国防省直属の国立軍事研究所。

VVÚは、NATO 加盟国において実際に神経剤(GB / GD / VX)を取り扱うことができる欧州最高レベルの信頼性を持つCBRN試験機関です。

試験は、規定濃度(約 1 µg/m3)のガス状神経剤(サリンGB / ソマンGD / VX)と、ブランク試験の比較で実施。

CALID-3

液体用 化学剤検知紙

PDF TNO 試験結果

試験場所: TNO Defence, Safety and Security , オランダ国防分野を担う国家応用科学研究機関。(TNO)。

TNO Defence は、欧州最大級の CWA(Chemical Warfare Agents)実剤試験施設 を有する国家研究機関であり、NATO 諸国における 化学剤防護・検知技術評価の中核的存在。

試験は、実際の化学兵器用の薬剤 GB(サリン)/HD(マスタード)/VX を用いた公式性能試験として実施。

CALID-3

液体用 化学剤検知紙

PDF SUJCHBO 結果

試験場所: Státní ústav jaderné, chemické a biologické ochrany(SUJCHBO) ,チェコ共和国におけるCBRN・核・化学・生物防護の国立研究センター。

試験は、実際の化学兵器用の薬剤を用い、CALID-3 が化学剤に対して確実に反応・検知することを 公式試験として検証。

CBRN検知管

化学剤用 検知管シリーズ

PDF VVÚ 試験内容

試験場所: Vojenský výzkumný ústav(VVÚ) 、Military Research Institute(チェコ共和国)、チェコ国防省直属の国立軍事研究所。

VVÚは、NATO 加盟国において実際に神経剤(GB / GD / VX)を取り扱うことができる欧州最高レベルの信頼性を持つCBRN試験機関です。

試験は、神経剤用検知管(DT11 を含む)を用い、 実際の化学兵器用の薬剤 GB(サリン)/GD(ソマン)/VX に対して、確実に検知反応が得られることを検証。

各機関が発行した試験報告書が必要な場合には、秘密保持契約書を締結の上、検証結果データをお渡しできます。

OPCW の枠組みで紹介された CALID-3

この動画では、化学兵器禁止機関(OPCW)の関連プログラムにおいて 紹介された CALID-3 のデモンストレーションをご覧いただけます。

CWA検知紙

化学剤検出と誤検出について

化学剤検出器は、対象物質が「存在する可能性」を検知する装置であり、 誤検出のリスクを完全に排除することはできません。

そのため、化学剤の検出では、 複数の検出器を組み合わせた段階的な確認が重要とされています。

単一の検出結果だけで判断するのではなく、 初期検出(スクリーニング)と識別を分けて行うことで、 検出結果の信頼性を高めることができます。

化学剤検知器の誤検出

製品の比較

化学剤検知器の比較は、単純に性能値を並べただけでは判断できません。 装置の優劣は、運用目的や使用環境によって変わるためであり、状況によっては複数の検知手段を併用することが有効となる場合もあります。

以下の比較表は、代表的な検知装置について、いくつかの評価項目を整理したものです。 どの装置が「良い・悪い」という結論を示すものではなく、使用条件に応じた選定を検討するための参考資料としてご覧ください。

想定される使用条件には、固定設置、車載搭載、偵察用途、個人装備としての携行、長期連続使用、単回使用など、さまざまな運用形態があります。

なお、神経剤の検出感度に限って比較した場合、DETEHIT は最も高感度な検知手段の一つと位置付けられます。



パラメータ IMS CALID-3 CBRN検知管 DETEHIT コメント
製品リンク IMS検知器 GTD-SII 検知紙 CALID-3 CBRN検知管 神経剤検知紙 DETEHIT
神経剤の検知 CALID-3 と IMS は、異なるレベルで識別可能。
ノビチョク Novichok/Новичо́к(A-series)対応 検知管および神経剤検知紙 DETEHIT は、ノビチョクを検知可能ですが、他の神経剤と区別できません。
検出感度(Sensitivity) 3 2 1 1 CALID-3 の感度は、検出可能な最小液滴量として比較。
識別能力(Selectivity) 2 2 1 なし 神経剤検知紙 DETEHIT は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤のみを対象として設計されており、神経剤同士を区別できない。
誤警報(False Alarm) 3 2 1 1
応答時間(Response Time) 1 2 3 3
重量(Weight) 4 1 1 1
個人装備として携行可能か 4 1 1 1
訓練必要量(Training Needed) 4 1 1 1 各製品はパッケージの説明を読むだけで使用可能。
費用 4 1 1 1
カタログ IMS化学剤検知器のカタログ 検知紙 CALID-3のカタログ Oritestの検知管のカタログ 検知紙 DETEHITのカタログ

比較:(可 = 可能 / 1 = 良い / 4 = 劣る、ただし「劣る」は相対比較であり、装置が悪いという意味ではありません)

Oritest 社について

Oritest は、CBRN対策向けの化学剤検知管・検知紙を専門とするメーカーです。 電源を必要としないシンプルな検知手法を用い、世界各国の現場で採用されています。

Oritest の強み

  • 実薬による検証
    神経剤・びらん剤などの実薬を用いた試験に基づく検知性能。
  • CBRN現場での実績
    消防・警察・軍・民間防災分野での長年の使用実績。
  • シンプルで確実な検知方式
    色の変化による直感的な判定で、訓練を受けていない現場でも使用可能。

製品ラインナップ

Oritest は、神経剤・びらん剤・血液剤などの化学剤に対応した 各種化学剤検知管および検知紙を提供しています。

  • 神経剤検知紙(DETEHIT)
  • 神経剤・化学剤検知管(DTシリーズ)
  • CBRN対策向けアクセサリ

信頼性と国際的な評価

Oritest の製品は、OPCW 関連試験を含む第三者評価や 実薬試験の結果に基づいて開発されています。 これにより、実環境下での信頼性を重視した設計がなされています。

Oritest 社のCWA,TIC分析機器
カタログ CALID-3 化学剤の検知紙のカタログ・ダウンロード

化学剤検出紙 CALID-3

  • 検出対象

    神経剤 (G,V) / びらん剤 (H) - 液剤
  • 感度

    0.5μL ~
  • 検出速度

    10秒未満
  • 使用可能な温度

    -40 ℃ ~ 60 ℃
  • 耐性

    湿気・雨水・燃料など
  • 保管可能期限

    5年
  • 冊子/検出紙の大きさ

    65 x 100 mm / 65 x 85 mm
  • ダウンロード

CBRN化学剤検知管

化学剤を色で判定する

化学剤(CWA)、有毒工業化学物質(TIC)の検知管、全22種類を提供。

アセチルコリンエステラーゼ阻害剤を総合的に検知できる神経剤検知管をはじめとして、マスタード、ルイサイド、ホスゲン・シアン、催涙剤、BZ など警察、消防、自衛隊などCBRNの 現場で必要とされる化学剤を網羅しています。

化学剤検知器セット