サリン、VX、マスタード化学剤の検出
化学剤を簡単に検出
CALID-3 は、液状のG剤(サリン)、V剤(VX)、H剤(マスタード)に対応した色変化により、10秒以内に化学剤の存在を確認できます。
使い方はシンプルで、車体や防護服、床、タイヤなどに付着した液体を拭き取るだけです。
専門知識がなくてもすぐに使用でき、テロなどの現場において大量の場所を短時間で調査するのに最適です。
見てわかる3色
反応の仕組みは、検出紙に染み込ませた3種類の染料が、それぞれの化学剤に反応して色を変えるというものです。
黄 | G剤/サリン、タブンなど |
緑 | V剤/VXなど |
赤 | H剤/マスタードなど |
OPCWとNATO標準
CALID-3 は OPCW(化学兵器禁止機関)での利用され、NATO の標準装備品としても採用されています。
世界中の消防・警察・軍隊、そしてシェルター内での備蓄としても使用しており、実戦的な信頼性が確保されています。
特にテロや化学事故の現場において、他の検出器と併用することで高い検出精度を確保できます。
5年間保存
未使用時は気温30℃の環境下でも5年間保存が可能で、定期的なメンテナンスや部品交換は不要です。
裏面の粘着シールで、防護服や車両の窓などに貼り付けて使用できるため、現場に持ち出す際にも便利です。
必要な時にすぐ使え、持ち運び・配備も簡単です。
CALID-3の特徴
- 色の変化で化学剤の存在を視覚的に確認
- 最短30秒以内に判別可能
- 製造から5年の保管期間
- シールの粘着力は48時間以上持続
- メンテナンス不要
- 各国に多数の導入事例あり

使い方
貼り付けて使う
防護服、車両のガラスなど飛沫がかかりそうなところに裏面シールで貼り付けて使います。あるいは車両のタイヤや、壁、床などを拭き取り検査します。
化学剤による暴露や汚染状況をすぐに確認できます。
液体に接触させて検出
液体、飛沫に検出紙を直接触れさせて使用する方法です。
暴露後、30秒ほどで待ちます。色変化が現れた場合には検出器冊子の裏面のサンプル色と見比べて化学剤を判定できます。
検出紙は偽陽性、つまり誤って色変化する場合もあります。そのため他の検出器(IMS - イオンモビリティースペクトロメトリー等)と併用して使うことを推奨しています。検出紙は偽陽性がありますが、テロの現場など化学剤の使用が明らかである場合には低価格で広い範囲の汚染調査を行えます。


化学剤を検出=色が変化
CALID-3は、紙の原料に赤・黄色・緑の染料粒子を染みこませています。
液状のG剤、H剤、V剤が紙に付着すると、各物質に対応する染料が溶けて色変化が見えるようになります。
特にV剤は常温・常圧ではすべて液体です。名前に「ガス(Gas)」とついていますが、気体ではなく揮発性の低い油状液体です。
黄 | G剤 | タブン・サリン・ソマン・エチルサリン・シクロサリン |
赤 | H剤 | サルファマスタード(別名:マスタードガス) |
緑 | V剤 | VXガス・VMガス・VPガス・VSガス・VGガスなど |
神経剤
G剤 (サリン) やV剤 (VXなど) は「神経剤」に分類されます。
神経剤は、神経伝達物質「アセチルコリン」を分解する酵素 (アセチルコリンエステラーゼ) の働きを阻害し、 アセチルコリンが神経と筋肉の接合部 (シナプス間) に過剰に蓄積します。 その結果、神経や筋肉が持続的に刺激され続け、けいれん、呼吸困難、最終的には死に至ることがあります。
マスタードガス
マスタードガス (H剤) は、残留性が高く、ゴムや皮膚を浸透するため、防護が難しい非常に危険な化学兵器です。 また、症状が現れるまでに時間がかかることも特徴です。
マスタード剤は、タンパク質やDNAを損傷する作用があり、発がん性があるとされています。
いずれの物質も常温では液体のため、検出紙で拭き取ることで検知可能です。

使用の手順
CALID-3から、検出紙を1枚切り離します。
防護服や装備品など、汚染が疑われる箇所に検出紙を接触させ、液体を吸い取ります。
検出紙に色がついたら、化学剤が存在している可能性があります。
OPCW(化学兵器禁止機関)
OPCWによる検出紙 CALID3 の紹介動画です。
OPCW(化学兵器禁止機関)の主な任務は、化学兵器の廃絶とその再利用の防止です。 加盟国が保有する化学兵器の申告と廃棄作業を監視し、必要に応じて現地査察を行います。 また民間用の化学品製造施設が兵器転用されていないかを確認するため定期的な査察も実施しています。
化学剤の検出器と誤検出について
化学兵器には、サリンやVXなどの神経剤、シアン化水素などの血液剤、皮膚に損傷を与えるびらん剤 (マスタードガスなど)、呼吸器に影響を与える窒息剤 (ホスゲンなど) など、さまざまな種類があります。 一方、工業有害物質には、硫化水素 (H2S)、一酸化炭素 (CO)、ホルムアルデヒド (CH2O) など、日常的な環境にも存在する有毒な化学物質が含まれます。
これらを検知するために使用される検出器は、対象物質が存在する可能性を調べる装置ですが、化学剤の検出においては誤検出のリスクが常に伴います。 そのため、複数の検出器を組み合わせて使用し、検出結果の信頼性を高めることが重要です。
たとえば、ある検出器がサリンを検出した場合でも、神経伝達物質アセチルコリンの分解を阻害するというサリンの作用は、一部の農薬とも共通しているため、 農薬をサリンと誤検出することが、1次スクリーニング (初期検出) 段階では起こり得ます。
このため、初期段階で「可能性がある」とされた場合には、次により高精度な分析装置による「識別」 (2次スクリーニング) が必要です。 それでも神経剤と識別された場合は、試料を正式な検査機関に提出し、質量分析などによる詳細分析を行うことで、農薬か本物の神経剤かを最終的に判断することができます。
このように、化学剤の識別には段階的な検出プロセスが必要であり、単一の検出器だけで判断することは非常に危険です。


化学剤検出紙 CALID-3
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検出対象
神経剤 (G,V) / びらん剤 (H) - 液剤 -
感度
0.5μL ~ -
検出速度
10秒未満 -
使用可能な温度
-40 ℃ ~ 60 ℃ -
耐性
湿気・雨水・燃料など -
保管可能期限
5年 -
冊子/検出紙の大きさ
65 x 100 mm / 65 x 85 mm -
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